
口腔解剖学講座の歴史と変遷
明治~大正
創設期、明治45年(1912)2月1日に大阪歯科医学校において講義が始まった。当時杉山盤三(東京歯医専)が歯科解剖学を担当、その後水戸純三(日本歯科医学士)と平田隆三(京府医専)が加わった。大正6年(1917)に大阪歯科医学専門学校が開校した。大正14年(1925)9月に小野寅之助(東京歯医専)が専任の教授となり、口腔解剖病理学教室を開設、歯科解剖、歯科組織、歯科病理などを担当した。
昭和
昭和5年(1930)4月に白數美輝雄(専6)が助教授に任命され、小野と白數はその後の歯科基礎学の発展に中心的役割を果たした。昭和12年(1937)4月、白數が教授に就任し、昭和13年(1938)4月に中村正雄(専11)と緒方健二(専13)が助教授となった。
戦後、口腔解剖学教室は筒井正弘(専22、大歯大名誉教授)、古橋九平(専23、岐阜歯大・口腔解剖学主任教授)、川原春幸(専27、大歯大名誉教授)と柴田寛一(専27、岐阜歯大・口腔外科学教授)らも教室員として在籍し、小野、白數、中村を中核として教室の充実が図られた。大学昇格(昭和22年(1947)6月18日)後は、専門課程の第1学年に対して口腔解剖学と口腔組織学・発生学の講義および実習を行った。昭和29年(1954)には、古橋が助教授、織田正豊(専29、大歯大名誉教授)と堀口幸彦(専29)が講師となり、昭和30年(1955)頃より、電子顕微鏡が導入され、建田温二(専16、非常勤講師)の指導を得て、東義景(大6、大歯大名誉教授)と飛田昇(大6)らが歯の硬組織の超微細構造解明に着手、多くの知見を学会に発表した。
昭和36年(1961)4月に大学院が設置され、教室は天満学舎基礎学教室棟に移転し、口腔解剖学専攻科にて白數、中村、古橋、織田と堀口幸彦、東と飛田(助手)らが多数の研究指導を行った。他方、白數は日本歯科医学会会長など多数の要職にも就いた。中村は昭和38年(1963)6月矯正学の教授に転籍した。昭和40年(1965)1月、白數は学長に就任した。昭和41年(1966)4月に織田が助教授に昇任し、古橋とともに口腔解剖学と口腔組織学の講義を担当し、白數は理事長・学長職に専念することになった。その後白數は昭和58年(1983)11月に勲一等瑞宝章を受章、昭和59年(1984)9月に大阪歯科大学名誉学長となり、昭和60年(1985)5月4日に逝去し従三位に叙せられた。
昭和41年(1966)11月に織田が教授に、昭和45年(1970)に東が助教授に昇任し、古橋は昭和46年(1971)岐阜歯科大学 教授に就任した。織田は昭和63年(1988)3月に定年退職するまで、東、高木正邦(大9)、崎山好雄(大12)、佐藤武(大14・大学院)、長楽謙輔(大16)、藤井征(大17)、小林徹(大18)、橋爪年世(大18)、坂本義之(大19)、辻高昭(大20・大学院)、多田逸(大21)、菊池史郎(岩手医大歯)、明坂年隆(大22・大学院、朝日大・名誉教授)、田中寛彰(大23)、岩井康智(台北医大歯)、山本洋幸(大25、大学院)、椿井孝芳(大34)らとともに、口腔解剖学と口腔組織学の教育、また歯胚の移植実験と歯の比較解剖学などの研究を行い、多くの業績を残した。織田は平成7年(1995)4月に勲四等瑞宝章を受章した後、平成22年(2010)9月12日に逝去し従五位に叙せられた。
東は昭和63年(1988)6月に教授に就任し、自身の研究の柱である歯の硬組織および口腔領域諸組織の超微細構造解明の他、多方面にわたり精力的に研究および教育を行った。また、楠葉学舎の建築委員会において尽力し、とくに形態系研究施設の整備にも大きく貢献した。
平成
平成12年(2000)3月に東が定年退職するまでには、高木と崎山(講師)と助手の多田、岩井、椿井、大矢卓志(大37)と隈部俊二(大42、現客員教授)らが講座員として在籍し、ともに当講座の教育と研究業務を担当した。研究業績については、とくに歯系組織の発生と超微細構造、歯の比較解剖学と歯・歯列の形態分析などの分野で多くの業績を挙げた。
岩井は、平成8年(1996)4月には助教授、平成13年(2001)4月には教授に就任した。一方、平成14年(2002)より大学においてカリキュラム2000が始まり、当講座は人体の発生、成長・発育、加齢(老化)、歯の形態、歯および歯周組織の構造と機能、人体の構造と機能を分担している。平成15年(2003)からは、中塚美智子(九歯大、現 本学医療保健学部教授)を始め、井辺弘樹(長崎大歯)、相川文子(徳大歯)、高間敬子(朝日歯大院)の入室によって、講座における研究テーマとして新たに細胞の分子生物学と高次脳機能の分野を発展させた。また、平成21年(2009)に上田甲寅(阪大院)と安春英(神大院)、平成22年(2010)に乾千珠子(阪大院)が加わり、非常勤講師(大学15名、大学院歯学研究科2名)、専攻生6名にて、教室の伝統の流れを汲みつつ、歯・歯周組織の再生に加え、口腔領域における侵害刺激の受容と伝達、口腔粘膜での味覚の受容・認知、加齢変化といった幅広いテーマに積極的に取り組み、多くの業績を残した。海外活動としては、慶熙大学校歯科大学(韓国)、台北医学大学と高雄医科大学(台湾)、メキシコ州立自治大学(UAEM、メキシコ)、上海交通大学(中国)と共同研究を行い、国際学術交流も活発に行った。
平成26年(2014)4月に松田哲史(大54、現 兵庫県立総合衛生学院 歯科衛生部長)が着任し、平成29年(2017)4月に田村 功(大歯院、現 本学医療イノベーション研究推進機構 事業化推進研究センター 地域医療等連携部門 教授)が教授に就任したことで、新たな教室体制となった。平成30年(2018)4月に隈部俊二が教授に就任、令和2年(2021)4月に松島恭彦(大歯院)が着任し、COVID-19の猛威による世界的パンデミック下で、オンライン講義、実習に奔走し、教育活動に不足がないよう一丸となって乗り越えた。パンデミックの終息後、さらに対面講義・実習の準備体制を強化に至った。
令和
令和3年(2021)8月、本田義知(東北院)を教授に迎え、その直後、令和4年(2022)に仲川雅人(奈医大院)が就任し、本田、隈部、松島、仲川の4名の教員の新たな研究体制となった。また、令和7年(2025)には女性教員として乾千珠子(阪大院)を加え、現在は教員5名、非常勤講師(大学17名)、専攻生2名、大学院生8名、学部学生(研究チャレンジ)8名とし、国内外に関わらず学術交流を通し、基礎・臨床における研究を展開している。研究内容としては、口腔解剖学・口腔組織学の基幹研究に加え、「老化現象解明」を中核テーマとしつつ、歯科口腔関連における次世代の治療法開発に向け、医工学、生体材料学、情報工学、再生医学などの学際的な技術を積極的に取り入れた先端応用研究も進めている。
令和8年(2026)7月現在
